「山の中の山へ 〜ミニヤコンカ、二人の走者〜」
🎬 本編(縦型・約7:35)
AI音声(VOICEVOX:黒沢冴白)による朗読ナレーション。字幕・BGM・タイトルは本作オリジナル。 YouTubeで見る ↗
🎞 ショート(分割版)
- 1/3標高、七千五百五十六メートル2:47
- 2/3女の名は、鄭君悦、ジュン・ユエ2:18
- 3/3そして、その日は来た2:14
この話を物語の切れ目で分けた縦型ショート(各3分以内)。1本ずつ単体でも見られます。
📺 原案となった公式動画
原案・映像の権利は GORE-TEX Brand Japan「Breaking Trails|エピソード8」↗ に帰属します(原語:中国語)。本作はその内容を日本語で再ナレーションした翻案です。
📖 ナレーション全文
標高、七千五百五十六メートル。
四川省の西、天を突いて聳える白い巨峰、ミニヤコンカ。
地元の人々が「山の王」と呼び、畏れ、崇めてきた聖なる山である。
その麓を、二人の若者が走っていた。
一人は、牛飼いの青年。
一人は、都会を捨てた女。
生まれも、育ちも、まるで違う二人であった。
彼らを走らせたものは、何だったのか。
これは、標高四千メートルの草原と、大都会の片隅から、
それぞれの運命に抗おうとした、無名のランナーたちの物語である。
──男の名は、ゲンランヤバ。二十二歳。
四川省アバ州、弘遠県。
電気も乏しい農村に、男は生まれた。
小学校を出ると、それきり学校へは行かなかった。
待っていたのは、ヤクの放牧であった。
夜を過ごすのは、標高三千六百メートル。
牛を追って山へ入れば、四千メートルを超える。
父は馬にまたがり、朝早く山へ消えていく。
男は歩いて後を追い、父の仕事を、少しでも肩代わりしようとした。
「僕が走っていると――」
男は、ぽつりと言った。
「家のヤクの世話が、父の肩に、のしかかってしまう」
村には、走る者など、一人もいなかった。
なぜ毎日走るのか。
変わり者だと、後ろ指を指された。
だが、男は走ることをやめなかった。
生まれてこのかた、省の外へ出たことすらなかった男が、
トレイルランニング、ただそれ一つを頼りに、初めて外の世界を見たのである。
「走らなければ、僕はきっと、一生、この山の中にいただけだろう」
胸にあったのは、ただ一つ。
父の。家族の。誇りになりたい。
その、一念であった。
──女の名は、鄭君悦(ジュン・ユエ)。四川省成都の生まれ。
背が高い、というだけの理由で、教師にバスケットボール部へ入れられた少女は、
やがて上海へ渡り、服飾デザインの道を選ぶ。
そして、自ら会社を興した。
だが、その先に待っていたのは、栄光ではなかった。
「起業は、自分一人のことではない」
女は振り返る。
「大勢の人間を率いて、前へ進まねばならない」
重くのしかかる、重圧。
女は、深刻な不安症に、蝕まれていった。
眠れぬ夜。募る焦り。
このままでは、潰れてしまう――
藁にもすがる思いで、女がつかんだ、たった一本の綱。
それが、「走る」ことであった。
初めは、ただ痩せるためだけの、退屈な運動に過ぎなかった。
だが、街を出て、山野へ飛び込んだ、その時。
女は、見たのである。
山の稜線。葉の葉脈。木々の輪郭。
そして、額のヘッドランプの光が、氷雪に当たり、砕け散る、その輝きを。
「人は、山に会いに行く、と言う。けれど私は――」
女は言った。
「私は、自分自身に、会いに行くのです」
走っている間だけは、スマートフォンを取り出すこともない。
外の世界と、切り離される。
残るのは、ただ、自分自身ひとつ。
迷いの多い日々の中で、そこにだけ、揺るがぬ目標があった。
そして、その日は来た。
大会「百百流沙」。
女は、ゴールへ飛び込んだ。
その記録は――大会記録を、塗り替えていた。
「あの一瞬こそが」
女は、静かに言った。
「私にとって、たった一つの、輝ける瞬間でした」
山を越え、谷を渡り、二人は走り続ける。
草原の暮らしを、男は今も愛している。
ヤクを追う、あの自由気ままな日々を。
だが――
「僕は走ることで、子どもたちの運命を、変えたい」
男は、遠い山なみを見つめて、言った。
「僕がこのまま牧畜の中にとどまれば、
子どもたちも、僕と同じで、何もできないままになってしまう」
一歩、また一歩。
何度倒れても、その度に、自らを、更新していく。
「今回できなかったのは、練習量が、足りなかっただけだ」
かつて自分を苦しめた「もっと上手くやりたい」という焦りは、
いつしか、前へ進むための、力に変わっていた。
眼前に、聖峰ミニヤコンカが、白く輝く。
「見ろ、なんて美しいんだ」
「本当に、美しい」
「――さあ、行こう」
「行こう」
二人は、再び、走り出す。
山の中の、さらに奥の山を目指して。
その背中は、もう、迷ってはいなかった。
――風の中に、彼らの走った跡が、確かに、残っている。
草原の風の中 名もなき者が駆ける
雪嶺(ゆきね)の光の中 誰も知らずに燃える
空を仰ぐ人は多いけれど
足もとの土を 誰が見ているだろう
地を這う星よ ミニヤコンカの裾で
息を切らして なお前へ、前へ
ヤクを追った少年の 泥にまみれた靴よ
眠れぬ夜を越えた 女の背中よ
誰にも褒められずとも 走り続けた
その一歩こそ 天より近い光
地を照らす星よ 消えないで、まだ
風よ 教えてくれ 彼らはどこへ
風よ 教えてくれ 彼らはどこへ
クレジット
- 原案
- GORE-TEX Brand Japan「Breaking Trails|エピソード8」↗
- 音声
- VOICEVOX:黒沢冴白(VOICEVOX)
- 背景映像
- Adobe Stock #291779110
- 構成
- AIによる翻訳・プロジェクトX風リライト・字幕・BGM(本作オリジナル)