「白い斜面の果てに 〜スキーで挑む八千メートル〜」
🎬 本編(縦型・約8:44)
AI音声(VOICEVOX:黒沢冴白)による朗読ナレーション。字幕・BGM・タイトルは本作オリジナル。 YouTubeで見る ↗
📺 原案となった公式動画
原案・映像の権利は GORE-TEX Brand Japan「Breaking Trails|エピソード7」↗ に帰属します(原語:フランス語)。本作はその内容を日本語で再ナレーションした翻案です。
📖 ナレーション全文
標高、八千メートル。
酸素は、地上の三分の一。
ひとたび嵐が来れば、人はただ、無力な点となる。
その高みで、板を履き、雪の壁を滑り降りようとする者たちがいた。
四十五度を超える、氷の斜面。
時にロープも使わず、頼るのは、スキーのエッジと、己の技だけ。
一つのミスも、許されぬ世界である。
「大丈夫?」
「うん、平気」
これは、山に多くを奪われながら、なお山へ向かった、
一人の男と、一人の女の物語である。
──男は、シャモニーの谷から、二十キロほど離れた村に生まれた。
昔ながらの、素朴な暮らしであった。
だが、その家は、ただの家ではなかった。
父は、何でもこなす人だった。
ヒマラヤの、八千メートル峰。
新しいルートを、それも、たった一人で切り開いていく。
アルパインスタイルの登山を、ヒマラヤに持ち込んだ、その人であった。
幼い男は、父の遠征のために、幾度も旅をした。
父に会うために、遠いネパールへも渡った。
「僕は――」
男は言う。
「計画を立て、リスクを見極める。その考え方が、好きなんだ」
男が選んだのは、スキー登山家(スキーアルピニスト)の道。
けわしい斜面を、板一枚で滑り降りる、極めてニッチな世界であった。
──女の名は、モード。山岳ガイドである。
二人が出会ったのは、山岳ガイドの講習であった。
女は、ただの登り手ではなかった。
山での事故と、リスクと、山岳スポーツの関係。
その研究で、博士号(PhD)を手にしていた。
「登山には、リスクがある。それは、決して変わりません」
女は、静かに言った。
「人はこれからも、山で命を落とし続ける。それは、変わらないんです」
ならば、事故を防ぐには、どうすればいいのか。
女がたどり着いた答えは、意外なものであった。
「人が、なぜ山へ行くのか。なぜ登るのか」
「その理由を、尊重しなければなりません」
「頭ごなしに否定しても、人は、耳を貸してくれませんから」
だが、女もまた、矛盾を抱えていた。
事故を研究しながら、自らも、山に登り続ける身であったのだ。
「登山をする人は、みんな、どこかで矛盾を抱えている」
女は言った。
「とくに、私たち二人のように、一生をかけて登り続ける人はね」
男が、初めて八千メートルに立ったのは、パキスタン。
その名を、ナンガ・パルバット。
そこで、嵐に遭った。
酸素のない、八千メートル。
もう、終わりだ――そう感じたという。
下山するより、ほかに、下せる決断はなかった。
つらかった。時間も、ずいぶんかかった。
だが男は、その決断でよかったのだと、静かに振り返る。
「僕には、人生で、ほかにもやりたいことが、たくさんあるから」
高い山ほど、得られるものは大きい。
ここシャモニーなら、モンブランは、数時間で登れる。
だが、八千メートルを登り、滑るには――
少なくとも、六週間。
過酷な日々を、一つの計画に、注ぎ込む。
だからこそ、目標に届いたその時は、
本当に、力強い、何かなのだという。
しかし、山は、多くのものを奪っていく。
男の父は、キャリアの終盤、八千メートル峰に、打ち込んでいた。
十一の頂を、登った。
そして、十二座目で――帰らなかった。
正確には、行方不明。
夏の、単独登攀の途上であった。
何が起きたのか、今も、分からない。
「父を、そこまで駆り立てた、その『ビジョン』を」
男は、言葉を探した。
「想像するのは、とても、難しい」
友を失うこと。
誰かが、山で死ぬということ。
それが何を意味するのか、身をもって感じること。
それは、本で読むのとは、まったく別のことであった。
「もし山が、その喜びよりも、多くを奪っていくなら」
男は言った。
「どこかで僕は、この『遊び』を、やめるだろう」
それでも、二人は、山へ向かう。
「山は、僕から、多くを奪った」
男は言った。
「奪うし、実際に、奪ってきた」
「でも、それと同じくらい――いや、今日では、それ以上に」
「山は、僕にとって、大切なんだ」
山は、危険だ。
だがそれは、自ら選び、受け入れたもの。
「リスクを求めるのが、第一の目的じゃない」
「それは、副産物なんだ」
「僕らは、リスクを求めているんじゃない」
「それがもたらしてくれるものを、求めているんだ」
山は、多くを奪うかもしれない。
たとえば、命さえも。
だが、山は、多くを与えてもくれる。
そこで、自分自身を、見つめ直せるということを。
遠く、南米。
氷の尖塔、セロ・トーレが、天を突く。
「うわ、きれいだ!」
「モードが、セロ・トーレに触れた!」
「まだ、着いてもいないのにね!」
笑い声が、風に溶けていく。
あの高みで、彼らがしていることに、
簡単な説明など、ありはしない。
……たぶん、ね。
──奪い、そして、与える。
その白い壁の前に、二人は、今日も立っている。
クレジット
- 原案
- GORE-TEX Brand Japan「Breaking Trails|エピソード7」↗
- 音声
- VOICEVOX:黒沢冴白(VOICEVOX)
- 背景映像
- Adobe Stock #291779110
- 構成
- AIによる翻訳・プロジェクトX風リライト・字幕・BGM(本作オリジナル)