「大地は語りかける 〜雪山に生きる、二人の物語〜」
🎬 本編(縦型・約10:59)
AI音声(VOICEVOX:黒沢冴白)による朗読ナレーション。字幕・BGM・タイトルは本作オリジナル。 YouTubeで見る ↗
🎞 ショート(分割版)
- 1/6カナダ西部、リルワットの地1:07
- 2/6女の名は、サンディ2:05
- 3/6女には、二つの名があった1:56
- 4/6男の名は、アダム2:10
- 5/6雪山を、二人は共に歩いた2:27
- 6/6愛は、憎しみなしにはありえない0:59
この話を物語の切れ目で分けた縦型ショート(各3分以内)。1本ずつ単体でも見られます。
📺 原案となった公式動画
原案・映像の権利は GORE-TEX Brand Japan「Breaking Trails|エピソード3」↗ に帰属します(原語:英語)。本作はその内容を日本語で再ナレーションした翻案です。
📖 ナレーション全文
カナダ西部、リルワットの地。
天へと連なる白い峰々が、静かに雪をまとっていた。
先住民の言葉で、山を「スカイト」と呼ぶ。
土地を「トゥムフ」と呼ぶ。
それは、大地を吹き抜ける風の音を、そのまま写しとった言葉であった。
その雪の斜面を、二人が登っていた。
一人は、先住民の血を引く、女。
一人は、最愛の人を、雪山で喪った、男。
生まれも、背負うものも、まるで違う二人であった。
彼らを、雪山へ向かわせたものは、何だったのか。
これは、山に癒しを求め、山に語りかけられながら、
それぞれの悲しみと生きようとした、二人の物語である。
──女の名は、サンディ。
その冒険の人生は、生まれる前から始まっていた、という。
十七歳になるまで、ほとんど毎年、
アフリカ、ヨーロッパ、北米――
少なくとも二つ、時に三つの大陸を巡って生きてきた。
やがてトライアスロンの世界へ。
世界最高の選手たちと、汗を流した。
だが、コースに縛られるレースは、次第に窮屈になっていく。
女がたどり着いたのは、山であった。
走ること。クロスカントリースキー。
そして、スノーボード。
「厳しい努力のあとの、深い疲労感が好きなんです」
女は言った。
「努力が、報われるんですよ」
だが、その道は、平らではなかった。
子どもの頃、外へ出るといえば、
ベリー摘みであり、採集であり、狩りであった。
それが、外の世界とつながる、唯一の手立てであった。
十代の終わり。
女は、自分がアウトドアに属しているとは、感じられなかった。
カナダの山に、ガイドとして立つ先住民の姿は、どこにもなかった。
「ここはお前の居場所じゃない」
そう言ってくる者たちを、押しのけて。
壁を、突き破って。
「本当に、つらかった」
女は振り返る。
「でも一度それを乗り越えると、気づくんです。アウトドアは、いったい誰のためのものなのかと」
女には、二つの名があった。
一つは、叔父が授けた名。
「カルカロキク」。
文字どおり訳せば、「雷のライチョウ」。
アウトドアの中で、先住民がどう見られるか。
その見方を、変えてきた者へ。
力強い、その名を、叔父は授けた。
「だから、その名に恥じないように、生きなきゃ」
もう一つの名は、「イシャ」。
ペンバートン・バレー、ミラー・ベンチという地から来た、古い物語の名であった。
かつて、脚の使えぬ女がいた。名を、イシャ。
村人たちは、秋になると谷から山の頂へ登り、
狩りをし、採集をして、冬に備えた。
イシャは、いつも言うのだった。
「先に行って。次の野営地――山の上――で、合流するわ」
村人たちが、姿を消すやいなや、
イシャは、自らの守護動物である鷲を呼ぶ。
二羽の鷲が、空から舞い降り、その両肩をつかみ、
山の上まで、運び上げてくれる。
だからイシャは、いつも村人より先に、着いていた。
山々を、飛び回る女として、知られていた。
「私はいつも山にいるから、と叔父は言うんです」
女は微笑んだ。
「飛んではいないけれど――滑ってはいますね」
──男の名は、アダム。
男には、妻がいた。
名を、ローラ。
カルガリーで出会い、山での動き方を、多くを、彼女から学んだ。
「僕はいつも、目標志向だった」
男は言った。
「でも彼女は、もっと、没入型だったんだ」
ある日のこと。
二人で、斜面を登っていた。
頂上まで、あと数百メートル、というところ。
そのとき、ローラが言った。
「そろそろ、引き返そうと思う」
男は、答えた。
「でも、頂上はすぐそこだよ」
すると、ローラは言った。
「でも、いいスキーができるのは、ここまで。私たちは今日、スキーをしに来たんだから」
二〇二〇年、一月。
ロッキー山脈。
二人でスキーをしていた、その時。
雪崩が、起きた。
ローラは、帰らぬ人となった。
雪崩を引き起こしたのは、自分であった。
彼女のもとへたどり着くのに、
四十五分近く、掘り続けた。
掘りながら、ただ疲れを感じ、自分を怒鳴りつけていた。
「今、疲れてる場合じゃないだろう」
「ローラのところに、行かなきゃ」
だが、救えなかった。
長い人生を、共に歩もうと、計画を立て始めたばかりであった。
それが、あの一瞬に、終わった。
「本当に、めちゃくちゃな気持ちだよ」
──雪山を、二人は共に歩いた。
サンディと、アダム。
似た者どうしであった。
アウトドアを、山を、癒しの場として生きているという点で。
世代を超えて受け継がれる、トラウマ。
最愛の人を喪った、痛み。
形は違えど、二人は、その傷とともに歩いていた。
「悲しみや、喪失や、トラウマには、いろいろな形があります」
女は言った。
自分に欠けているものを認めながら、
それでも前へ進もうとする者を、女は深く尊敬していた。
男が、妻とかつてそうしたように、山を体感するとき。
きっと、彼女がすぐそばにいると、感じているはずだ、と。
女には、信じていることがあった。
「山にいるとき、私は一人じゃないって分かる」
「祖先がそばにいて、私の決断を、導いてくれている」
昨日、尾根で、冷たい風に吹かれていても、
女は、温かさを感じたという。
ここが自分の領土であり、
祖先が何世紀も旅してきた土地を、眺めているのだと、分かって。
かつて、リルワットの領土は、八十万ヘクタールを超えていた。
だが保留地がつくられたとき、
民は、そのわずか〇・〇〇四パーセントに、押し込められた。
寄宿学校は、若者を集め、文化と、言葉を、奪った。
失われた物語を、女は、探し始めた。
氷河の横断。大きな山岳救助。
その物語の中には、雪崩地形への注意や、
埋もれた人の見つけ方といった、小さな知恵が、
そっと織り込まれていた。
愛は、憎しみなしにはありえない。
喜びは、痛みなしにはありえない。
無理に乗り越えようとすれば、決して前へは進めない。
それは、山を征服する、という感覚に似ている。
もし喜びが「山を征服すること」だったなら、
豊かな体験など、決して得られない。
「悲しみは、克服できない」
女は、静かに言った。
「そうじゃなくて、それを、自分の中に、どう溶け込ませられるか、なんです」
大地はいつも、私たちに語りかけている――
その声を聴く者だけが、傷とともに、また一歩を、踏み出していく。
クレジット
- 原案
- GORE-TEX Brand Japan「Breaking Trails|エピソード3」↗
- 音声
- VOICEVOX:黒沢冴白(VOICEVOX)
- 背景映像
- Adobe Stock #291779110
- 構成
- AIによる翻訳・プロジェクトX風リライト・字幕・BGM(本作オリジナル)