「街を走る者たち 〜ウィー・ラン・アップタウン、受け継ぐ絆〜」
🎬 本編(縦型・約9:17)
AI音声(VOICEVOX:黒沢冴白)による朗読ナレーション。字幕・BGM・タイトルは本作オリジナル。 YouTubeで見る ↗
🎞 ショート(分割版)
この話を物語の切れ目で分けた縦型ショート(各3分以内)。1本ずつ単体でも見られます。
📺 原案となった公式動画
原案・映像の権利は GORE-TEX Brand Japan「Breaking Trails|エピソード4」↗ に帰属します(原語:英語)。本作はその内容を日本語で再ナレーションした翻案です。
📖 ナレーション全文
ニューヨーク、マンハッタン。
その北の端に、アップタウンと呼ばれる街がある。
ワシントン・ハイツ。
人々が「リトル・ドミニカ共和国」と呼ぶ一角である。
大声で語らい、大音量で音楽を鳴らし、音で心を表す街。
コンクリートの谷間を、月曜の夜ごとに、百人の群れが駆け抜けていく。
その先頭に、一人の男が立っていた。
──男の名は、ジョシュ。
インド系アメリカ人、移民の一世である。
両親は、インドのグジャラートから、海を渡ってきた。
アメリカ人には「インド的すぎる」と言われ、インド人には「アメリカ的すぎる」と言われた。
どこにも、居場所がなかった。
もう一人、遠い西の山から、この街へやって来た男がいた。
──男の名は、アーム。
カリフォルニア出身、プロのウルトラトレイルランナー。
山の中に一人こもり、自分の世界を生きてきた男である。
ニューヨークは、初めてであった。
かつて、アームは、走る人間ではなかった。
体重、二百五十ポンド。
ストレスに追われる、エンジニアの日々。
六年前、一足きりのスニーカーを履いて、夜の街へ出た。
走ったのは、わずか四百メートル。
人生で、いちばん、きつかった。
だが、男には、投げ出してきた過去があった。
このまま走り続けたら、どうなるのか。
ただ、それだけが、知りたかった。
「あの四百メートルが、俺の人生を変えたんだ」
五十キロ。百マイル。二百マイル。
そして、一マイルのループをひたすら回る、三百マイルレースで頂点に立った。
足はボロボロ。
トレイルの上で、十分、十五分の仮眠をとりながら、なお前へ。
今年、走る距離は、千マイルを超えるという。
──二人が出会った。
生まれも、育ちも、まるで違う。
山を走る男と、街を走る男であった。
早朝、パリセイズの高台から、二人は下りはじめる。
ジョージ・ワシントン・ブリッジを渡り、トレイルを抜け、アップタウンへ。
そこには、ジョシュの仲間たちが待っていた。
「走り始めたのは、六年前だったな」
ジョシュが、笑って言った。
「じゃあ、この街じゃ、俺が先輩だ。あんたはルーキーだよ」
十年余り前。
ジョシュは、この街で、走りはじめた。
相棒のヘクター、そして、あと三人ほど。
たった、それだけの仲間であった。
当時、自分たちのような人間が走るなど、誰も考えなかった。
警官に、何度も呼び止められた。
「おい、何をやってる。なぜ走ってる」
だが、二人は決めた。
他人がどう思おうと、気にしない、と。
「自分自身を、そのスポーツの中に、見出さなきゃいけない」
ジョシュは言う。
「そしてそれは、時に、一人で立つことから始まるんだ」
一人が立ち、その後ろに、また一人。
一歩、また一歩。
やがて、でっかい家族になっていった。
そのグループの名を、「ウィー・ラン・アップタウン」という。
月曜の夜、百人が集う。
老いも若きも、誰もが、家族のように。
その灯は、五百夜を超えて、途切れることなく続いてきた。
十年、である。
──だが、ジョシュにも、闇の底があった。
「エンジニアになれ。医者になれ。弁護士になれ」
両親が願った、アメリカン・ドリーム。
金を稼ぎ、家を買い、結婚する。
長いあいだ、男は、その最短ルートを走っていた。
二十五、二十六の頃。
気づいてしまった。
心が、からっぽだ、と。
孤立していった。
やがて、死を思うようになった。
ある夜、あと一歩、というところまで行った。
鏡を見上げ、まさに、決断しようとした、その瞬間──
誰も、俺を救ってはくれない。
自分で外へ出て、戦い続けて、もう一度、チャンスを与えるしかない。
そう、気づいたのだ。
九十年代、ドミニカから、大勢がこの街へやって来た。
その多くが、ジョシュと同じ、移民の一世であった。
「どうせお前には、何もできない」──
そんな枠に、いつも閉じ込められてきた者たち。
その枠が、逆に、彼らを強くした。
「あれ、自分たちみたいな人間も、走るんだ」
走ることの意味が、この街で、変わっていった。
アップタウンの通りに、二人が現れる。
空気が、変わる。
仲間たちが、次々と駆け寄ってきた。
プロのウルトラランナーに会えると、誰もが喜んだ。
つま先立ちで、足首をほぐし、体を目覚めさせる。
ジョシュが、皆に、アームを紹介する。
「走ることは、誰にでもできる。
文字通り、どんな人でも、どんな体型でも」
山に一人こもってきたアームは、この喧騒の中で、何を思ったか。
「大事なのは、マイル数じゃない。コミュニティなんだ」
走ることが、故郷と呼べる場所になる。
そんなこと、想像もしていなかった。
ジョシュには、願いがある。
いつか、子どもができたら、必ず、このランに連れて来たい。
そして、いつか、自分が走れなくなる日が来る。
その日には、誰かが「ウィー・ラン・アップタウン」を引き継いでほしい。
この街に積み上げてきた、良きものの上に、さらに、積み重ねてほしい。
相棒ヘクターの、口ぐせがある。
「アップタウンによる、アップタウンのために」
一歩、また一歩。
走る者は、いつか走れなくなる。
だが、走ることは、受け継がれていく。
それは、ただ走ること、以上の意味を持っていた。
愛。
そして、遺したもの。
クレジット
- 原案
- GORE-TEX Brand Japan「Breaking Trails|エピソード4」↗
- 音声
- VOICEVOX:黒沢冴白(VOICEVOX)
- 背景映像
- Adobe Stock #291779110
- 構成
- AIによる翻訳・プロジェクトX風リライト・字幕・BGM(本作オリジナル)