「白い斜面に、生きる理由を 〜雪山に挑む、三人の女たち〜」
🎬 本編(縦型・約10:02)
AI音声(VOICEVOX:黒沢冴白)による朗読ナレーション。字幕・BGM・タイトルは本作オリジナル。 YouTubeで見る ↗
🎞 ショート(分割版)
この話を物語の切れ目で分けた縦型ショート(各3分以内)。1本ずつ単体でも見られます。
📺 原案となった公式動画
原案・映像の権利は GORE-TEX Brand Japan「Breaking Trails|エピソード5」↗ に帰属します(原語:英語)。本作はその内容を日本語で再ナレーションした翻案です。
📖 ナレーション全文
冬の山は、人を拒む。
風が吹きすさび、雪を巻き上げ、視界を奪う。
森の下では、ふかふかの粉雪。
だが、森林限界を越えれば、すべては吹き飛ばされてゆく。
その白い斜面を、女たちが滑り降りていた。
命を賭して、ただ一本のラインを引くために。
なぜ、彼女たちは山へ向かうのか。
なぜ、危険を承知で、挑み続けるのか。
──一人めの名は、マノン・ロズキ。二十二歳。
フランス、ラ・クリューザ。
アルプスに抱かれたスキーリゾートに生まれ、その地で人生のすべてを過ごしてきた娘である。
はじめは、ただ外で遊んでいただけ。
ほかの子と、なんら変わらぬ子どもであった。
だが、フリーライド・ワールドツアー。
世界を舞台に、荒々しい大自然の斜面を滑り降りる、その競技のなかで、才能はあふれ出す。
「ドロップ――!」
マノンは、雪原へと身を投じる。
実況が叫ぶ。
「実にわくわくさせてくれる若手。才能があふれ出ています」
──二人めは、スウェーデンに暮らす女。
かつて、モーグルの選手であった。
九歳で試合に出はじめ、十二、三で全国大会。
胸に抱いた夢は、オリンピック。
その夢は、叶えられた。
ただし――思い描いていたのとは、少しだけ違う形で。
彼女は、山のふもとに生まれた。
ヒップホップ、テニス、バスケットボール、陶芸。
なんでも試したが、心をつかむものはなかった。
高校一年。
フリーライドのスキースクールを知り、「とりあえず試してみよう」と踏み出す。
その一歩が、すべてを変えた。
やがて、夫となるプロスキーヤー、ライナ・バルケルードと出会う。
二〇一〇年、フィヤールラーヴェン・ワールドツアー。
いまは、彼の故郷スウェーデンで暮らし、二歳の息子を育てている。
「人生とは、どこへ連れて行かれるか分からないもの」
女は、静かに言った。
その女が、若きマノンを、ある山へと案内する。
ストゥーレのはずれ、スノータヘアガナ。
アルプスで育った娘を、北国の手つかずの大自然へ。
「正直、少し不安になることもある」
女は言う。
「でも、ここには、美しいものがある。それを、彼女と分かち合えたら」
風が、すべてを支配する山。
「天気が気に入らないなら、ちょっと待てばいい」
そう言い交わしながら、二人は雪の斜面を見上げた。
──そして、三人め。
その名は、ジャッキー・パソ。
アメリカ、東海岸に育った女である。
スキーの、いちばん古い記憶。
六歳。
ジャンプ台に挑み――見事に、失敗した。
前回大会のチャンピオン。
巨大なクリフを、次々と決めてゆく、強き滑走者。
だが、その胸のうちには、誰も知らぬ闇があった。
「私がタホに移り住んだのは――」
ジャッキーは、ぽつりと語りはじめる。
「深刻な、うつ病を患ったあとのことでした」
薬を、過剰に摂取した。
入院。
精神科の、閉鎖病棟。
一週間、閉じ込められていた。
そんなとき、母から告げられる。
「がんを、患っている」と。
暗闇の底で、女は雪を思う。
外に出て、体を動かすこと。
それは、うつと闘うために、どうしても必要なものであった。
そして――閉鎖病棟を出て、わずか二か月後。
ジャッキーは、初めての優勝を果たす。
満足に練習を積んだ、シーズンではなかった。
体重は、百十八ポンド。およそ、五十三キロ。
筋肉もなく、がりがりに痩せていた。
それでも、彼女は雪の上に立ち、頂を目指した。
なぜ、生き延びることができたのか。
そばには、仲間がいた。
当時の彼女自身よりも、その可能性を信じてくれた者たちが。
「いいぞ、ジャッキー!」
「ジャッキー!」
「最高だったよ、ジャッキー」
その声が、彼女を支える。
「彼らのおかげで、私は『生き続けたい』――そう思い続けることができた」
山は、非情である。
雪崩が起き、何かが狂えば、それは理不尽で、とてつもなく過酷。
「山は、『あなたなんてちっぽけだ』と、突きつけてくる」
だからこそ、彼女たちは知っている。
「ノー」と言うことの、大切さを。
「ねえ、私、今どこにいるの?」
無線の向こうで、声が問う。
視界は閉ざされ、先はまるで見えない。
「写真を、送ろうか?」
「お願い」
これは、たった一人で挑む個人競技。
だが――
「一人で滑っているようでいて、仲間がいなければ成立しない」
チームでしか、成り立たぬ闘いであった。
雪が、ボール状に転がってくる。
良い雪ではない。
ならば、引き返す。
サイドステップで頂へ登り返し、別のルートを選ぶ。
「状況が良くなければ、引き返すと決めるだけ」
自分自身の声に、耳を澄ませながら。
滑り出せば、ほかのすべては消えてゆく。
今、この瞬間だけ。
まさに、フローの境地。
「それを仲間と分かち合えたら、もっと最高」
やがて、三人は、それぞれの答えにたどり着く。
マノンは、大会よりも、映像の撮影へと向かう。
そこには、創造性がある。スタイルがある。
「本当に、何かを伝えられる」
ジャッキーもまた、思う。
「引退したほうが、少しは気が楽になる。でも、完全に離れてしまうのは、やっぱり難しい」
そして、年上の女は、若きマノンの背中を見つめ、こう漏らした。
「彼女の未来が、本当に楽しみ。すごく遠くまで行ける子だと思う」
「それに――ちょっと、嫉妬もあるかな」
生まれも、育ちも、まるで違う三人。
けれど、ようやく言葉を交わし、女は気づく。
「私たちは、とてもよく似た理由で、スキーをしている」
勝つことよりも、価値のあるもの。
やり遂げ、そのやり方に、自分自身が満足できること。
それこそが――成功。
山は、「あなたなんてちっぽけだ」と突きつける。
それでも、女たちは、その白い斜面に、生きる理由を探し続ける。
渇望し、必要とし、生きがいとする、山へ。
今日もまた、一人、また一人と、雪原へ身を投じてゆく。
クレジット
- 原案
- GORE-TEX Brand Japan「Breaking Trails|エピソード5」↗
- 音声
- VOICEVOX:黒沢冴白(VOICEVOX)
- 背景映像
- Adobe Stock #291779110
- 構成
- AIによる翻訳・プロジェクトX風リライト・字幕・BGM(本作オリジナル)